もしも可能であれば、誰にも気づかれずに矯正を行いたいという人は非常に多いと思います。
“絶対に誰にも気づかれない”という保証はないのですが、目立ちにくく気づかれにくい矯正装置としてインビザラインというものがあります。
しかし、インビザラインは万能ではなく、症例によってはインビザラインでは矯正できない可能性があります。
それを事前に知っておかないと、いざ歯医者さんに行って自分がインビザラインで矯正できないと言われがっかりしてしまいますよね…。
そこで今回は、インビザラインで矯正可能な症例や実際にクリニックで矯正を行った実例、そしてインビザラインでは矯正できない症例についてをご紹介します。
この記事を参考に、自分がどういう症例なのかをもう一度意識し、インビザラインで矯正できるのかどうかを確かめてみてください。
Contents
1.インビザラインで治療可能な症例
インビザラインで矯正が可能な症例としては、以下のようなものがあります。
- 叢生(そうせい)
- 過蓋咬合(かがいこうごう)
- 反対咬合(はんたいこうごう)
- 空隙歯列(くうげきしれつ)
- 開咬(かいこう)
- 上顎前突(じょうがくぜんとつ)
それでは一つずつご紹介していきます。
叢生(そうせい)
叢生とは、歯が重なり合ってでこぼこになっている状態の歯列の事を指します。
引用元:みやび矯正歯科医院
顎が歯に比べて小さかったり、逆に歯が顎と比べて大きかったりと、歯とあごのバランスがおかしいと、歯が顎の中に綺麗に収まることができず、でこぼことした歯並びになります。
ちなみに叢生は「乱ぐい歯」とも呼ばれており、多くの人に見られる「八重歯」も叢生の一つです。
叢生は日本人の不正咬合の中でも最も多い症例となっており、12~20歳の男女の不正咬合の割合として、叢生は44.3%という結果が出ています。
出展元:医療法人スワン会
叢生の症例には個人差があるため、実際に医師の診察を受けてみないとわかりませんが、インビザラインで治療する際に抜歯が必要になる場合もあります。
叢生や八重歯に関してはこちらの記事でも詳しくご紹介していますので、参考にしてみてください。
「叢生はインビザラインで矯正できる!その症例と叢生の真実とは」
「八重歯(叢生・乱杭歯)はインビザラインで矯正できる?その詳細とは」
過蓋咬合(かがいこうごう)
過蓋咬合とは、噛み合わせが深い状態のことを指します。
引用元:医療法人社団 精密審美会
わかりやすく言うと「しっかりと噛むと上の前歯が下の前歯に被さり、下の前歯が見えなくなってしまう噛み合わせの事」を過蓋咬合といいます。
過蓋咬合は顎関節症になりやすいだけではなく、下の前歯が上の前歯の後ろの歯茎を咬んでしまう事もあります。
このような症例は、インビザラインで矯正を行うことが可能です。
反対咬合(はんたいこうごう)
反対咬合とは、正常な噛み合わせとは反対に、下の前歯が上の前歯よりも出ているような状態を指します。
引用元:受け口 反対咬合 専門
反対咬合は「下顎前突」と呼ばれることもあり、見た目として、下のあごが前に出ているため、「受け口」と呼ばれることも多いです。
受け口自体は日本人が抱える歯列のトラブルの中でも一番少ない悩みとなっていますが、治療を行わないで放置しておくと様々な弊害があります。
反対咬合に関してはこちらの記事で詳しくご紹介していますので、参考にしてみてください。
「インビザラインで受け口は治る!反対咬合のマウスピース矯正について」
空隙歯列(くうげきしれつ)
空隙歯列とは、歯と歯の間に隙間が空いている状態のことを指します。
引用元:ほてい矯正歯科クリニック
一般的には「すきっ歯」と呼ばれることが多く、前歯と前歯の間に空間があるケースだけではなく、歯全体に隙間があったり、奥歯の部分に隙間があったりと様々なケースがあります。
空隙歯列になってしまうと、歯と歯の隙間から息が漏れてしまい発音に影響が出てしまったり、食べ物が詰まりやすい為、歯周病になる可能性もあります。
そんなすきっ歯もインビザラインで治療を行うことが可能です。
開咬(かいこう)
開咬とは、噛み合わせたときに歯に隙間が生まれてしまう状態のことを指します。
引用元:医療法人社団 精密審美会
開咬には以下の2つのパターンがあります。
- 奥歯を噛み合わせたときに前歯に隙間ができる「前歯部開咬」
- 前歯を噛み合わせたときに奥歯に隙間ができる「臼歯部開咬」
開咬はそれほど珍しい症例ではなく、12-20歳においては10人に1人の割合で開咬、もしくはその傾向があると言われています。
開咬になると食べ物が咬みにくかったり、発音しづらかったりという弊害がありますが、こちらもインビザラインで矯正を行うことで治すことができます。
上顎前突(じょうがくぜんとつ)
上顎前突とは、上あごが下あごよりも前に出ているような状態のことを指します。
引用元:みやび矯正歯科医院
上顎前突は一般的に「出っ歯」とも呼ばれており、有名な不正咬合の一つです。
逆に下あごだけ前に出ている状態を「下顎前突(かがくぜんとつ)」といい、これは反対咬合の部分でご紹介した内容と同じ症例になります。
上顎前突(出っ歯)に関してはこちらの記事で詳しくご紹介していますので、参考にしてみてください。
「出っ歯の矯正がインビザラインでできる!【5分で読める】」
以上がインビザラインで矯正することができる症例になります。
2.実際に治療した症例写真
1章でご紹介した6つの症例を実際にどのように治療したかをご紹介していきます。
叢生(そうせい)
出展元:本郷さくら矯正歯科
叢生で悩んでいるこの方は26歳の女性で、治療期間は約2年です。
八重歯と前歯のデコボコが気になって矯正を決意したようで、左の上から2枚目の画像を見ると、確かに八重歯が前に出てきてしまっているような印象を受けます。
また下顎の右側も多少歯並びが悪くなっており、これも含めて治療に入っています。
この方の場合は上の左右の犬歯2本と、下の左右の小臼歯2本、計4本を抜歯しており、空いたスペースを使い歯列を整えています。
治療後は歯列が美しいアーチを描いており、叢生の面影が全くありませんよね。
過蓋咬合(かがいこうごう)
出展元:医療法人社団 精密審美会
この方は20代の女性で、治療期間は1年5か月程です。
前歯が深く噛みこんでおり、下の前歯が見えないくらいの過蓋咬合です。
この症例をワイヤーで矯正を行おうとした場合、片顎ずつ治療していくため、治療期間が非常に長くなってしまいます。
しかし、インビザラインは上下のあごを同時に動かすことができるため、治療期間を短くすることができ、綺麗な歯列にすることができています。
反対咬合(はんたいこうごう)
出展元:青山アールエフ矯正歯科
この方は20代の女性で治療期間は約1年8ヶ月です。
治療前の歯並びの問題点としては、受け口だけではなく、咬合平面の傾斜(歯並びが曲がっている状態)でもありました。
また、軽度の骨格のズレもあったようです。
そこで、骨格のズレと受け口を考慮し、インビザラインと顎間ゴムを使って治療していきました。
顎間ゴムは噛み合わせを整えるためにも重要なもので、受け口の治療の場合は使われることが非常に多いです。
治療が終わったことで、歯並びが良くなっただけでなく、横顔も美人になりましたね!
空隙歯列(くうげきしれつ)
出展元:医療法人社団 精密審美会
治療を受けた方は20代の女性で、治療期間は1年6か月です。
上下の前歯の部分に隙間が空いており、それに加え上顎前突もあったため、インビザラインで隙間をなくしながら前歯を下げていく治療を行いました。
下の前歯に関してはもともと一つ欠損しているため、単純に隙間をなくすだけの治療ではなく、歯を削り、さらに顎間ゴムを使用し、上下の噛み合わせを修正しながら治療を進めていきました。
治療後は隙間もなくなり、上顎前突の症状も見事に治療し、綺麗な歯列になっています。
歯を削る治療と、顎間ゴムについてはこちらで詳しくご紹介していますので、興味があれば見てみてください。
「インビザラインでは歯を削ることがある!歯を削るIPRとは?」
「インビザラインに使うゴムの効果とは!顎間ゴムの効果・注意点」
開咬(かいこう)
出展元:五十嵐歯科室
この治療を受けた方は17歳の女性で、治療期間は約10か月です。
前歯が噛み合わないという悩みを持って診察に来ており、実際に治療前の写真を見ると、上の前歯と下の前歯の間に空間があるのと、下あごが左側にずれているような状態でした。
非抜歯での治療を望んでいたため、抜歯は行わずに歯列を大きく広げることで歯の移動スペースを確保し、矯正を行いました。
治療後は確かに歯列のアーチは広くなっていますが、開咬は改善し、正中線もしっかりとあっている、綺麗な歯列になりました。
上顎前突(じょうがくぜんとつ)
出展元:東京駅前しらゆり歯科
この方は20代の女性で、治療にかかった期間は1年8か月ほどです。
治療前の写真を見ると、確かに上の前歯が前に出ており、本人もそれを気にして診察を受けに来ていました。
行った治療としては、上あごは歯の後方移動と歯を削るIPR、下あごは歯列のアーチ拡大と歯を削るIPRを行い、両方のあごがバランスよく噛み合うように設計されています。
治療中は、毎日のインビザライン装着を怠ることなく、また同時に顎間ゴムもしっかりと使用していたので、歯列は綺麗になりつつ、噛み合わせも問題なく治療を終えられたそうです。
以上が、インビザラインを使って実際に治療した症例になります。
症例には個人差や医師の治療方針の違いなどがありますので、完全に同じように治療をすることは難しいですが、参考にしていただければ幸いです。
3.インビザラインで治療ができない症例
インビザライン単体では治療ができない症例として、以下のようなものがあります。
- 埋伏歯などマウスピースで歯を覆うことができない場合
- 骨格が原因で歯並びがずれている場合
それでは一つずつご紹介していきます。
埋伏歯などマウスピースで歯を覆うことができない場合
埋伏歯のような歯の一部、または全てが顎の骨や歯肉に埋まっており、マウスピースで覆うことができない場合、インビザラインを使って矯正を行うことができません。
そもそもインビザラインはマウスピースで圧力をかけて歯を動かしていきますが、マウスピースからかかる圧力が不十分だと、歯を動かすことができません。
その為、例えば歯が生えてくる途中で歯の萌出が止まってしまった、というような場合は、インビザラインを使用して矯正を行うことは難しいです。
骨格が原因で歯並びがズレている場合
歯並びがズレている原因が骨格の場合、インビザラインで根本から矯正することは難しいです。
インビザラインで治療できるのは、あくまで歯列だけですので、インビザラインで仮に歯並びを綺麗にしたとしても、原因の根本である骨格を改善することができません。
その為、症例によっては外科手術が必要な場合もありますので、注意と覚悟が必要になります。
以上がインビザラインで治療ができない症例になります。
4.インビザラインで治療ができない場合の対策
インビザラインで治療ができない場合は、以下のような矯正方法が考えられます。
- インビザラインとワイヤーの併用
- 最初から最後までワイヤーでの矯正
インビザラインとワイヤーの併用
インビザラインで矯正ができないと言われた場合、ワイヤーも一緒であれば矯正を行うことができます。
そもそも、インビザラインは全ての症例に対応しているわけではありませんので、中には治療できないということもありますが、ワイヤー矯正であれば、全ての症例に対応しています。
その為、最初にワイヤー矯正で大きく歯を動かしてから、インビザラインで細かく歯列を治していくことで、矯正を行うことができます。
ちなみに、インビザラインとワイヤーを併用するケースは下記のような場合が多いです。
インビザラインとワイヤー矯正に関してはこちらの記事で詳しくご紹介していますので、参考にしてみてください。
「インビザラインとワイヤーの併用とは?概要や効果・注意点を解説!」
最初から最後までワイヤー矯正
インビザラインを使わずに、ワイヤーだけで矯正を行っていく方法です。
大きく分けると、インビザラインとワイヤーに関してはこのような違いがあります。
インビザライン矯正 | ワイヤー矯正 | |
見た目 | 薄い透明にマウスピースのため、気付かれにくい | 矯正装置が見えてしまうため、気付かれやすい |
症例 | 状況によっては治療ができない | どんな症例でも治療可能 |
来院頻度 | 2~3ヶ月に1回、アライナーを受け取る | 毎月の確認が必要 |
診療時間 | アライナーの受け渡しがメインなので20分~30分前後 | 歯の移動の確認なども含めるため、1時間前後 |
治療期間 | 開始時にパソコンのシミュレーションをもとに判断できる | 治療終了までわからない |
費用 | 80万円~120万円 | 80万円~100万円 |
痛み | 痛みは少ない | 治療中に痛みは発生する |
装着感 | パソコンでシミュレーションを作成するので装着感は良好 | 医師が診療し作成するので装着感は医師によるが、器具によって口内炎ができることもある |
自由度 | 好きな時に取り外しができる | 装着すると取り外しはできない |
歯磨き | 取り外しができるので自由にブラッシングが可能 | 気を使ってブラッシングする必要がある |
口内の病気 | メンテナンスが自由にできるため、ほとんど病気はない | ブラッシングの仕方によっては病気にかかるリスクあり |
話しやすさ | 若干の発音障害があり | 裏側矯正に関しては、発音障害あり |
インビザラインとワイヤー矯正の違いに関してはこちらの記事で詳しくご紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。
「インビザラインとワイヤーを比較!初心者でもわかる2つの違い」
5.まとめ
今回この記事でご紹介したことをまとめると下記のようになります。
- インビザラインでは治療できない症例もある
- 治療できない症例はインビザライン”単体のみ”では治療できない
- 基本的な症例はインビザライン単体で治療可能な為、歯科医師に相談する
今では多くの人がインビザラインで矯正を行っており、実際に症例数も非常に多くなってきております。
しかし、万能ではない以上、もしもインビザラインで矯正ができないと言われてしまった際に、どのような矯正方法であれば良いのかを知る必要があります。
ですので、この記事を参考に、自分がどのような症例なのかを意識し矯正方法を選ぶために役立てていただければうれしいです。